北九州市立大学同窓会

大学だより

リチウム抽出 今夏から実験

南米ボリビア・ウユニ塩湖
北九州市立大 吉塚教授らEV電池へ供給にも期待

 レアメタル(希少金属)の一種、リチウム の世界の埋蔵量の半分を占めるとされる南 米ボリビアのウユニ塩湖で、北九州市立大 の吉塚和治教授(分離工学)と住友商事など のグループが今夏からリチウムの抽出実験 に乗り出す。リチウムは電気自動車(EV)の 電池の原材料として急速な需要拡大が見込 まれている。
EV生産に欠かせない希少資源を安定的に確保するために、九州発の技術がチャレンジする。

 吉塚教授によると、ボリビア政府は2015年ごろまでにウユニ 塩湖でリチウム回収の商業用プラント操業を始める計画で、各 国の技術水準を比べて最も効率的で低コストのシステムを採用 する意向という。吉塚教授のグループのほか、韓国や中国、フラ ンスの参加が見込まれている。

 ウユニ塩湖はボリビア西部の標高370メートルにある塩原。福 岡県の2.5倍の面積がある。地下30メートルにたまる水のリチウ ム濃度は2,830ppmで、海水の1万7千倍。 世界のリチウム埋蔵量は1千万トンといわれ、ウユニ塩湖を中心にボリビアには540万トンが未開発のまま眠っているとされる。

 抽出実験では、吉塚教授が佐賀大海洋エネルギー研究セン ターに在籍していた04年に開発した技術を活用する。ウユニ塩 湖からくみ上げた地下水を蒸発池にためて、塩分などを取り除 きながら濃縮。濃縮水の中のリチウムをマンガン酸化物と結合 させて回収する。

 3月までに現地に機材を搬入し、研究員を派遣。夏から本格的に実験を始める。 12年3月ごろまでに複数回の連続試験をして実績を挙げ、ボリビア政府に採用をアピールする。 吉塚教授は「九州発の技術でリチウムの安定供給を実現したい」と話している。

リチウム
 レアメタル(希少金属)の一種。パソコンや携帯電話 のほか、環境への負荷が低減できるとして世界で急速に普及 するハイブリッドカーや電気自動車の電池の原材料としても 需要増が見込まれている。世界の年間生産量は約10万トン。日 本の輸入量は年約1万5千トンだが、8割ほどをチリに頼っ ており、将来的な安定確保に向けて輸入先の分散が急務に なっている。

2011年1月12日 西日本新聞